介護の仕事をしていて大切なこと、それは、安全を確保しながら適切な介護を提供することかもしれません。介護の業界では、ヒヤリとした、ハッとした出来事を「ヒヤリハット」として情報共有し、事故に繋がらないよう改善や予防につなげるという取り組み組みがあります。
これに対し、数年前から思わずにやりとした、ほっとした場面を共有する「にやりほっと」の取り組みが広がっています。長谷工シニアホールディングスという会社が始めたもので、ご利用者のできること、好きなこと、やりたいことを知って職員間で共有する取り組みです。
「ヒヤリハット」はできないことや気がかりなことといったネガティブな視点になりがちですが、「にやりほっと」では良い部分や強みに目を向けるため、できること探しに繋がるポジティブな視点で相手を見ることができます。
日頃の支援でにやりほっとした場面を思い浮かべると、
・ご自宅の庭に咲いた紫陽花を「綺麗でしょ?見てやって下さい」と言われた
・料理番組を見てよくコメントをされるので、お料理をされていたのか尋ねると飲食店や旅館で働いていたことを教えて下さった
・手先が器用ですねとお伝えすると「色んな仕事をしてきたから」と昔の仕事の話を沢山して下さった
・90代でも背筋が伸びていることをお伝えすると「昔踊りをやっていたから、厳しいお稽古にも耐えてきたんよ」と話された
といった内容でしょうか。
これらは介護とは直接関係のない情報に思えるかもしれません。しかしご利用者の好きなこと、得意なこと、関心のあることについて色々知っていく中で、ご本人の意欲を引き出す声かけや介助を行うことができたり、できないと思っていたことができることがわかったり、楽しい時間を共有できることがあります。
踊りをされていた方は、補助具なしでも歩けることを誇りに思っておられ、ヘルパーの腕を持って毎週近所のスーパーまで歩いて買い物に行かれます。「この腕があるから、あんたがいるから頑張れる、また来てや」と言っていただけると、ヘルパーも今日も来て良かったと思えます。
安全第一の介護の世界ですが、「できること探し」の視点で接することは、ご利用者がその人らしい暮らしを送るお手伝いにも繋がり、ヘルパーの仕事のやりがいにもつながるかもしれませんね。